小池祐貴選手は完全に桐生を超えた

おれは桐生アンチということもあるが、今まで日本選手権の予想などで常に、小池選手の方が桐生より速いはずという持論を展開してきたが、ついに結果が出てしまった。ダイヤモンドリーグのロンドン大会の決勝で小池選手が9.98(+0.5)で走ってしまった。これは桐生が日本新を出した時の9.98(+1.8)よりタイムだけ見ても遥かに速いし、何よりダイヤモンドリーグの大会で結果を出したというのがすごい。

ダイヤモンドリーグは陸上ビジネスの象徴

ダイヤモンドリーグというのは世界トップレベルの大会で、オリンピックや世界陸上のような特別な大会を除いては世界最高峰の大会で、モータースポーツでいうとF1、ロードバイクでいうとツール・ド・フランスのようなものだ。F1のように年間を通して色々な場所で大会があり、総合ポイントでも争われるというものだ。テレビ中継もされていて、陸上ビジネスの象徴といってもよい。日本選手権とかセイコーグランプリとか、日本の大会は世界的に見ると何それレベルで、世界のトップ選手は全員がダイヤモンドリーグで鎬を削り、タイムを伸ばしていく。

「陸上王国ケニアの真実」というビデオがYoutubeで検索すると見つかる。ここでは長距離種目で世界を席巻するケニアの中で多くの青年が、豊かになることを目的に死にものぐるいで競争を続ける姿が映し出されている。今はパンとスープしか食べれないような貧しい環境だが、がんばって国内の競争に勝ち、世界の部隊で活躍すれば貧困を脱することが出来るという夢がある。その中に出てくる一人の青年が、

「夢はレースでいい結果を出してヨーロッパ(ダイヤモンドリーグ)に行くこと」

と言っているシーンが印象的だ。ダイヤモンドリーグは豊かさの象徴なのだ。実際にダイヤモンドリーグでは一位になれば100万円の賞金が出る(彼らにとっては超大金だ)し、CMなどのオファーがあればさらに一桁二桁リッチになれる可能性もある。ウサインボルトのように年に20億も稼いでしまう例外もいるが、長距離でもトップレベルならば年間に1億くらいは稼げてしまう世界だ。

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彼らからすると、マラソンの日本新記録を出すだけで1億円のボーナスがもらえる日本がさぞかし羨ましいことだろうと思う。

着順がすごい

ダイヤモンドリーグや前身のゴールデンリーグには日本人は時々出場していたのだが、常に国内より遅いタイムで走り、惨敗して帰ってきたというのが過去の歴史だ。今回、桐生が10.13で小池選手とは0.15も差がついてしまったわけだが、これは桐生にとっては通常運転といえる。世界陸上に向かって調子は上げているはずだし、レース動画を見てもスタートが失敗したとは言えない。つまり、きちんと実力を出し切って、いつもどおりの着順で帰ってきたというのが桐生。オリンピックや世界陸上でも日本人は常に、「日本のタイムより0.2くらい遅くなってしまう」結果しか出せない。以前の桐生ならば10.3台まで落ちていただろうから、これでも少しは改善された方だ。

対して小池選手は日本で走るのと同じようなタイムできっちりと結果を残してきた。これが非常に大きい。これはつまり、オリンピックや世界陸上の準決勝でも結果を出す能力があることを意味する。山縣も、日本と海外での記録があまり変わらない選手として知られているが、小池選手はタイム的に、山縣選手の上位互換と言っても良いだろう。

なぜ小池と山縣は海外でも実力を出せるのかというと、彼らが慶応出身だからというのが考えられる。コーチのいない環境の中で、自分たちの頭で考え、トレーニングをしているからこそ、海外の大会になっていつもと違う空気感の中でも自分の走りが出来るのではないか。自分で考えて自分で実行するタイプの選手の方が海外の試合でも力を出している印象がある。今なら高跳びの戸邉選手などはそうだし、以前なら400mハードルの為末選手などもそうだった。桐生についていうと、彼の飛び跳ねるようなガラパゴス走法はトラックの合う合わないで結果が大きく振れてしまう特徴があるのだとも思う。

さらにすごいのはレース内容だ。小池選手は60メートルくらいまではトップで走っており、そこからもあわやという感じだった。実際に0.01秒差5着のアンドレダグラスはポストボルトとも呼ばれる、100は9.91、200は19.8のベストを持つ完全に格上のスプリンターで、0.01秒差3着のヨハンブレイクは人類史上ウサインボルトの次に速いスプリンターであり、脚の怪我で一時期落ち込んでいた時期もあったが、最近は少しずつ復調傾向にある実力者である。この二人の間に小池祐貴が入ってしまっているのがとんでもない。9.98というタイムもすごいが、それよりは世界陸上を間近に控えたダイヤモンドリーグでこの結果を出しているということがすごすぎる。他の選手も相当仕上がっているはずだし、世界陸上を見据えた意識の中走っているはずなのだ。実際に小池選手も、世界陸上の準決のつもりで走ったということをコメントしている。

ドーハの世界陸上は、サニブラウンと小池のどちらかが決勝に残るような気がしてきた。願わくば両方と思うが、現実問題としてはそう簡単ではないので、どちらか一方でも残ってくれればと思う。

武井壮も注目

おれがなぜ小池選手に注目しているかというと、上半身の筋肉、特に肩や腕が尋常じゃなく発達していて、和製ヨハンブレイクと呼ぶにふさわしい存在であるというのが理由だが、

小池選手については、武井壮も一押しの選手として挙げている。

www.youtube.com

小池選手の走りはいかにロスなく走るかということを目標に緻密に計算されており、それが、後半での追い込みや粘りに繋がっている。フィジカル面での才能に圧倒的に恵まれた選手だが、その走りは超繊細であり、日本人に多い身長ということもあり、選手を引退したあとコーチとしても活躍出来るのではないかと思っている。慶応のコーチになったり、山縣となにか陸上クラブをはじめたり、そういう未来がありそうだ。

アジア記録の9.91を真っ先に更新するのはもしかしてサニブラウン選手ではなく小池選手なのではないかと思えてきた。それと、日本人史上初のsub10/sub20達成者になる可能性もある。世界的にはこちらの方が評価が高く、日本で達成出来るのはサニブラウン選手と小池選手の二人しかいないので、とても楽しみだ。

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