【感想】ケトン体が人類を救う

この本は、糖質を抑え、ケトン体をエネルギー源として生活することのメリットについて論じている。

著者の宗田氏は、産婦人科医です。妊婦は、妊娠期間中だけ糖尿病になってしまうことがある。これを妊娠糖尿病という。妊娠糖尿病は巨大児などを引き起こすため、胎児にとっても妊婦にとっても望ましくない。一般に胎児は3000g程度で生まれるのが一番良いとされている。

ここで、現在の医学では、一般的な2型糖尿病(つまりデブ型糖尿病)と同様に、

  • インシュリンを打つ
  • 和食は健康によいからと言って、ご飯中心にする
  • その上カロリーは減らす

という処置をする。しかし、まずこの3点セットが2型糖尿病に対しても無意味であり、特に妊娠糖尿病に対してインシュリンを打つことは意味がないどころか悪手であると論じている。

なぜ和食が良いと言われているのか、それは、「妊婦が糖質を減らすことによってケトン体が増えることは、胎児が奇形になる確率が上がる」と言われているからである。これは大昔に書かれた一本の論文が根拠になっているが、著者は、その論文自体の結論の導き方に誤りがあると述べている。

そして何よりの証拠として、著者は、胎児や妊婦の血中ケトン体濃度を測定した。これが今までされていなかったというのが信じがたいが、世界初の発見らしい。それは、実は胎児や妊婦はむちゃくちゃケトン体が高いということだ。この結果を以って、ケトン体が増えると胎児に悪影響であるというのは間違ってると述べている。

この発表は、日本なんとか学会から大変なバッシングを受ける。医学の世界は、新しいことに対して臆病なくらいに保守的な傾向があるというのは外目からも分かるが、これはその世界の性質によると思う。例えばエンジニアという職業は「今までにないものを作れないエンジニアは存在価値がない」のであるが、医者の世界では新しい手術法、新しい薬の開発などを行う人間はむしろ少数派であり、多くは、大学で学んだことを実践するだけのロボットなのだ。その意味では、この先AIに置き換えられると言われている弁護士などと変わらない。保守的な性質以外の理由は、著者もいうように、製薬会社との癒着だと思う。

ただケトン体が高いことを発見して終わりではなく、実際に、妊娠糖尿病になったケースや、あるいはもともと1型糖尿病だったのに妊娠してしまったケース(これは一般的には危険過ぎるため堕胎となるらしい)も糖質制限によって救っていることが紹介されている。

ケトン体によって生活すると、糖尿病以外にも癌やアルツハイマーに効果がある。まず、癌はブドウ糖がなければ繁殖しない。従って、糖質制限をすることはダイレクトに、癌を兵糧攻めすることになると述べている。癌とブドウ糖の関係については、PET検査の原理について参照されたい。アルツハイマーについては、もともとてんかんなどの症状に対して糖質制限が効果があることはわかっていて、最近ではアルツハイマーは高血糖が原因であることが分かったため、脳の糖尿病と呼ばれている。このように、糖質制限をし、ケトン体中心生活に変えることで、現役を長く続けられる可能性が上がる。

この本は是非、これから妊娠する女性に読んでほしい。

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