XRPL AMMの仕組み

XRPLのAMMの有効化が1週間後に迫ってきた。

しかし、ネットにはAMMについて明らかに誤った理解した人が多く見られる。 例えば、AMMはステーキングのようなサービスだと思っていたりする。 この理解は非常に危険であるから、おれの理解する範囲でAMMの仕組みを説明する。

AMMの基礎

AMMの機能は、 トレードと流動性提供の2つである。 これらをそれぞれ説明する。

トレード

トレードにおいて、AMMは自動的にトークン価格を決定する。 そのために、AMMはプールの中に2つのトークンを保持する。 例えば、AとBをそれぞれA枚B枚保持するとして、 この時のプールの状態を(A,B)と書くことにしよう。

AMMはAとBの価格総量が同じであると考える。 そのため、A1枚と交換するためにはBはB/A枚必要ということになる。

AMMはプールの中でトレードが行われる時、AとBの関係性について ルールを持って状態遷移を行う。 これをbonding functionという。 これは、XPRL AMMではもう少し複雑であるが、概ねABの積一定である。 つまり、トレーダーがAをx枚買った場合、プールの状態は(A-x, AB/(A-x))とならないといけない。

ここでx=1とした時、 BはAB/(A-1)枚となるから、AB/(A-1)-B=B/(A-1)が実際の支払い枚数となる。 これはB/Aよりも大きくなっていることがわかるが、 この差B/(A(A-1))をSlippageという。 当然、プールが巨大になればSlippageも小さくなる。

流動性提供

流動性の提供は現在のプールの比率を 保ったままトークンのペアを提供する。 これは、その時点の価格によって流動性を提供するのだから当たり前だ。

新しい流動性提供によって、プールの状態が(A,B)から((k+1)A, (k+1)B)になったとする。 この時、新しい流動性提供者は、 現在の総LPトークン量を1とした場合、kを受け取ることになる。 LPトークンはプールに対する支配権のようなものであり、 のちにプールからトークンを引き出す時に、引き出し割合を主張するために使用される。

この状態においても、1LPトークンによって引き出せる トークン量は変化していないことに注目されたい。

Impermanent Loss (IL)

次に、AMMの流動性提供におけるリスクである Impermanent Loss (IL) について説明する。

一般性を破壊しないまま話を簡単にするため、 流動性提供者は1人しかいないものとして、 トークンをそれぞれ1枚ずつ流動性提供したとする。

時間が経ったあと、市場価格が変動したとする。 簡単のため、Aの価格がBと比較してx倍になったとする。 当然、アービトラージャーによって AMMの価格は調整され、プールの状態は (1/(root x), (root x))となっているはずである。

この時点で、トークンを引き出そう。 すると、流動性提供者の引き出したトークンの評価額は、 (root x) + (root x)ということになる。 もともと、流動性提供をしなければ、 x+1となっていたはずなので、 x+1 > 2(root x)であるから、 「流動性提供者にならない方が良かった」 ということになる。 これがAMMがステーキングのようなフリーランチではない理由である。

この式からわかるように、 xがいくつであろうと一般に、 ILが発生する。

流動性提供者の利益

ILが存在するのに流動性提供するモチベーションは何だろうか。 それは、流動性提供によって報酬が得られるからである。

手数料報酬

その1つが手数料報酬である。

AMMを利用する場合、トレード手数料が発生する。 これは例えば、Bを払ってAを買う場合、 Bを手数料分だけ多く払うということでAMMに支払われる。

これが流動性提供者に対してLPトークン比率に応じて分配される。

XRPLではトレード手数料の比率は、 LPトークン量応じた投票によって決定される。

この手数料決定には2つの要因が影響する。 1つは、当たり前だが手数料は高い方が良い。 もう1つは、しかし手数料が高すぎればトレーダーはAMMを使ってくれず、 手数料報酬は逆に減ってしまう。 したがって、このバランスをとった手数料が市場原理によって決定される。

XRPL CAM

既存のAMMはこうして、手数料によって流動性提供者に報酬を提供するが、 XRPLではもう1つの仕組みによって流動性提供を魅力的にする。

それがContinuous Auction Mechanism (CAM) である。

AMMはトレーダーに対して、手数料無料の特権を売る。 トレーダーはこれをオークションによって競り落とす。 オークションにはLPトークンが使われ、落札に使われた LPトークンはバーンされる。 すると、既存の流動性提供者のLPトークンの価値は 上がることになる。

手数料無料特権を活かして有利なトレード(主にアービトラージになると思うが) を行いたいトレーダーは、オークションに参加するということになり、 市場原理によってその入札価格は、そのトレードの結果にとってギリギリ得になるような ラインまで高まることになる。 これは、流動性提供者の視点でいえば、 同量の取引が行われていた場合に払われていたであろう 手数料が先払いされるようなことを意味しており、 これだけ見ると得になってないように思われるが、 実際には手数料無料という特権は強力でありトレードの機会を大幅に増やすため、 手数料報酬の期待値は増加することになる。 また当然だが、CAMはAMMのスタビライザとしての効果も持つ。

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