京大式日本語講座「まず英語で考える」

リモートワークの普及によって、文章によって正しくコミュニケーションを行う 必要性は以前より高くなった。 しかし、日本語というのは、注意して使わなければ意図が複数に読み取れてしまうこともある 非常に難易度の高い言語である。

日本語は自然言語である以上、完全に紛れのない文章を書くことは難しいのだが、 限りなく完璧に近づけるための方法論は存在する。

しかし、公立白痴教育においては、こういった方法論については教わらない。 厳しくチェックもされないため、自分が間違っているということに気づくチャンスもない。 中学受験をして偏差値の高い学校を受ける場合には、 こういった悪癖を治すチャンスが与えられるが、 これは一般には当てはまらない。

今回紹介する技法は、「まずは英語で考える」というものであるが、 実はこの技法をおれは、全く独立した場所で2度聞いた。 1つは京大の研究室であり、もう1つは日立の研究所である。 理系というのは、ただモノを作ってぱんぱかぱーんの世界だと思われがちだが、 実は、自分がしたことを他人に正しく伝える技術がとても重要だ。 まず英語で考えることは、曖昧な日本語を正しく伝えるために大変有力な技法であり、 修士以上の理系にとっては当たり前のものだといえる。

先日、こんな文章を見た。

制御ソフトウェアXによって入力された値はソフトウェアYで直接使われることはない

この文章には致命的な欠陥がある。

  1. 「制御ソフトウェアXによって」がどこにかかってるのか不明
  2. 入力した主語が不明

この欠陥によって、この文章は2通りに読める。

  1. 制御ソフトウェアXは値を入力した。しかし、それがソフトウェアYで直接使われることはない
  2. 誰かが入力した値は、ソフトウェアYで直接使われることはない。なぜならば制御ソフトウェアXが制御するから

なぜ、おれには欠陥が素早く見えて、文章が2通りに読めることがすぐにわかったのだろうか。 簡単だ。おれは、この文章を英訳しようとした。

  1. 入力された値 By 制御ソフトウェアX は使われることない By ソフトウェアY
  2. Thanks to 制御ソフトウェアX (主語は不明だが)入力された値 は使われることはない By ソフトウェアY

こうやって英作文をしようとしてみると「よって」という言葉が何を意味してるのかわからないという問題に気づくことが出来る。 ここでは、ByなのかThanks toなのかがわからないということだ。 単語も動詞も具体的にはわからなくてもいい。とにかく英語の形にしてみることで、日本語の曖昧な部分が明らかになる。 当然、文章を書く場合においても、まずは英語で考えてみることによって、曖昧な日本語を書く可能性を下げることが出来る。 英語がわからないのであれば、死ぬしかない。

では、どうすれば良かったのだろうか。 もし2が意図なのであれば、「よって」のあとに読点を入れて「よって、」としなければいけないし、 あるいは文章を2つに分離する必要があるかも知れない。文章を細かく分割することは、 多くの場合において、曖昧さを回避する有力な手筋となる。 こういった技法自体は例えばこのような本に書いてあるから、是非読んでみると良い。

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