レッドゾーントレーニング理論

すべてのトレーニーが共通して抱くミレニアム懸賞問題より難しい問題がある。「どうトレーニングをすればもっとも効率良く筋肥大出来るか」だ。

筋肥大については謎が多く、海外ではエクセサイズが盛んなこともあり盛んに研究もされているのだが、未だに答えが出ない。多くの聡明なボディビルダー・パワーリフターが自分の経験を元にして色々な理論を語り、それを世界中のトレーニーが追いかけているのが現状だ。

分かっていることはある。まず、トレーニングをしなければ筋肥大はしない。これは自明に受け入れられている。また、筋肉の断面積と筋力は比例することも分かっている。しかし一方で驚くべきことに、「超回復」という良く知られた現象も実はそんなものは存在せず、毎日トレーニングしても筋肥大するという説もあり、実に混沌としている。

その中でトレーニーは大体以下のどれかを選択している。

  1. 8レップス程度で限界まで追い込む。あるいはさらにフォーストレップスを使うか、事前疲労法を使う。とにかく最後の最後まで力を振り絞ることを目的とする。これはパワーリフターに多い。彼らはピリオダイゼーションを導入したトレーニング計画を立て、試合前には徐々に重量を上げていき、1RMに慣れさせていく。これをピーキングという。
  2. 軽い重量でとにかくパンプさせる。これはステロイドを使ったボディビルダーがやっていることが多いので、ステロイドを使っていて極端に筋肥大しやすい場合に、軽い重量を使って怪我せずに筋肥大させていくことに比重を置いていると言われることがあるが、ナチュラルのボディビルダーでもこういうトレーニングを好んでいる人もいる。
  3. 加圧トレーニング。脚や腕を縛った状態でトレーニングをすることで成長ホルモンの分泌を促す目的がある。意図としては2に近いのだが、それより遥かに軽い重量を扱う。

このうち私は多くの場合1を採用している。たまに、筋肉の回復を重視したい場合は軽い重量で回数を重ねる場合もあるが、ほとんどの場合は8-12レップスで限界を狙う。

しかしこの方法をすると、私が見てきた限り、ほとんどのトレーニーは、「最後の2レップスで辛くなることが重要であり、その前のレップスは疲労させるためにある」と考えるようになる。特に日本人はあらゆるものごとについて「苦しいことは美徳だ」「辛ければ結果が出る」と考える傾向があるから、おそらくほとんどの日本人トレーニーは多かれ少なけれこのように考えている。事実、私もそうだった。8レップスは8ハロン(1600m)のレースと考えられる。最初の6ハロンは適当に流し、最後の2ハロンで鞭を叩き勝負をする。トレーニングはまるで競馬のレースのようだった。

この動画を見るまでは。

www.youtube.com

ボディビルダーの北島達也氏は、アメリカでトレーニングしていた経験をYoutubeを通して発信している。「日本人は圧倒的にたんぱく質摂取量が足りない」というのが有名な主張であるが、他にも筋肥大に重要な刺激として「神の7秒間」というのを提唱している。上の動画で述べられていることも神の7秒間と同じことなのであるが、レッドゾーンという概念が導入されているためここではレッドゾーントレーニング理論と呼ぶこととする。

この理論の要旨は,

  1. 筋肉に対する負荷は、重量 x 速度で計算出来る
  2. 筋肉を肥大させるためには負荷についてある閾値を超えたレッドゾーンに達する必要がある
  3. 従って、最後の最後まで振り絞ってゆっくり挙げることには意味はなく、むしろもっともフレッシュである1レップス目でもっとも重要となる
  4. だから1レップス目からアドレナリン全開全力全速力でいけ

というものである。

私は今この理論を元にしてトレーニングをしている。この理論は経験的にも納得出来る。学生時代、私は、重い重量を使った方が筋肉が肥大すると考えていた。しかし重い重量を使うと関節や腱への負荷も高くなり、怪我をしやすくなると考え、8レップスなど無難なレップスを採用している。しかしもっとも良いのは4レップスくらいだと考えている。重量が重くなれば、余裕がなくなり最初から全力で挙げるしかなくなる。だから自然とレッドゾーントレーニング理論が実践出来るというのが理屈ではないかと今ならば考えられる。

もっともこれは私が瞬時的に力を出すことに対してやや優秀な遺伝子を持っているからかも知れない。他の人にとってはあるいは全く筋肥大に貢献しないかも知れない。

スポーツ遺伝子を調べてみた - テストステ論

しかし少なくとも私にとっては、レッドゾーントレーニング理論は有効である可能性が高い。また、1レップス目から本気でやってレッドゾーンを突き抜ければ良いのであれば、限界になってからフォームが崩れたまま挙げる必要がなくなる。

そもそもフォームが崩れた状態でぎりぎり挙げるというのは危険な行為だ。高重量になれば、ベンチプレスであれば肩、スクワットであれば腰を怪我する可能性が出てくる。だからトレーニングは常に同じフォームでやることが望ましく、レッドゾーントレーニング理論によると、フレッシュな状態で高い速度で挙上することのみが意味があるのだから、このような危険な行為はそもそも意味がないとして排除出来る。

参考にしてほしい。

comments powered by Disqus
Built with Hugo
テーマ StackJimmy によって設計されています。