40を前にしてスクワットを完全に引退する

この業界では、 スクワットをしないやつは馬鹿だ、トレーニー失格だなどと言われることがある。 また、上半身に比べて下半身が貧弱なトレーニーをチキンレッグなどと揶揄することもある。

おれは京都大学でパワーリフティングを始めて、 今やってるトレーニングも基本的にはそのマインドでやってるから当然、 スクワットもサイクルに取り入れている。

だけどもう、限界かも知れない。スクワットをやめるための心の整理をしたい。

スクワットの負荷

スクワットとデッドリフトは、他の種目とは全く異質の種目だといえる。 他の種目はどれも、コンパウンド種目と呼ばれるものであっても対象筋は明確であり、 例えばベンチプレスであったとしても胸の収縮を意識して、胸を狙って効かせることが出来る。

しかし、スクワットとデッドリフトではそんなことを考える余裕はない。 脚に引かせるとか、腰に効かせるとかを考える余裕もなく、 骨格全体を使って全力で立つ、引く。これしかない。

4年前くらい、ちょうどニートをしていた時に69キロの体重で160キロのスクワットをした動画がある。

このくらいの重量になると背負うだけでもずっしりとくるし、しゃがむことにも勇気がいる。 だから、精神的に高揚させ、アドレナリンを出しまくって恐怖を押しつぶす。 デッドリフトでは、試技前にアンモニアの刺激臭を嗅いで興奮させる選手もいる。

そういったハードな側面から、スクワットはキングオブトレーニングと呼ばれたりする。 しかしこのハードさは一方で、身体への負担の大きさも意味する。

まず明らかなのは筋肉への負荷だ。 特に腰は、他の種目でも使うからダメージが抜けにくい性質がある。 そのため、慢性的に腰の痛みを抱えているアスリートは多いし、 おれも何度か怪我をした。 デッドリフトに関しては取り入れると腰のダメージが絶対に抜けないので、 これに関してはもうやっていない。

スクワットで腰が完全にファックされた

もう1つは、精神的な負荷だ。 スクワットをした日はトレーニング後も高揚し続ける。 そのため、おれの場合、興奮してなかなか眠れなくなることがある。 眠っても、疲れから途中覚醒してしまったりもする。 本来、高強度のトレーニングをした日なのでぐっすりと眠って回復したいわけだが、 眠れないとなると、次の日にも疲労を残した形になる。 これは実際のところ、仕事にも差し支えるレベルだ。

実際に、スクワットの日によく眠れた記憶は、一度もない。 大抵はなかなか寝付けずに6時間くらいしか睡眠がとれないし、 全く眠れないことも無視出来ない頻度で起こる。 大抵は大脳を強制シャットダウンさせる目的で二度三度とアレをしてしまい、破滅することになる。

スクワットの危険性

スクワットはこのように非常にハードな種目なのだが、 一方でおれの年齢は確実に上がっていき、回復力が落ちてきてるという事実がある。

そのため、最近はどうも、腰の疲労が慢性的に抜けず、 スクワットの負荷はRPE8程度で十分に抑えているにも関わらず、 腰が万全の状態で出来ることはないという状況が続いている。 学生の時は、多少無理をしても腰を怪我したことは一度もなかったので、 その頃と比べると明らかに回復力が低くなったと感じる。

腰の怪我というのは非常に危険だ。 腰の断裂くらいならばまぁいいだろう。それは休んでいれば時期に治るからだ。 しかし、回復不能なダメージを負うこともある。 腰が断裂すれば、背骨を守っていたサポートが一気に失われることになる。 その時の体勢が悪ければどうだろうか。 バーベルの負荷が、サポートのない腰や背骨に一気にかかり、神経を損傷する可能性もある。

スクワットに価値はあるのか

果たして、今のおれにとってスクワットはそこまでのリスクを冒す価値のある種目といえるだろうか?

もし、スクワットをやめたら、疲労困憊になって一日が潰れてしまうことはなくなるし、 上半身のトレーニング頻度も増やせるのではないだろうか? 上半身を重い日と軽い日の週2で回せたら、上半身に関しては筋肥大しやすくなるのではないだろうか?

そもそも、身体のかっこよさの大半は、上半身によって担保されていないだろうか? スクワットをすれば脚も太くなるし、腰も太くなるが、 その身体は本当にかっこいいだろうか? 新庄は選手時代、脚が太くなるとかっこ悪いからスクワットをしなかったと言われている。

横川尚隆は本当にかっこいいボディビルダーだが、彼のかっこよさの大半は上半身と顔に担保されていないだろうか? 脚もすごいが、それはびっくりもののけショーと同じ意味でのすごさではないだろうか?

こうして考えると果たして、競技者でもない一介のソフトウェアエンジニアにすぎないおれが、 下半身の太さを求める意味がどこにあるのだろうか?

スクワットを完全に引退する

ない。明らかにない。

スクワットを続けた場合とやめた場合を比較すればこれは明らかだ。 確かにスクワットは面白いし、おれ自身もっとも好きな種目なので、 以前に腰が壊れた時に一度引退を考えたものの、続けてきた。 一応気持ちの上では、ニート時代の記録を更新するつもりではある。 しかし現実的にいうとそう簡単ではないように思うし、 記録向上を目指すことは、怪我のリスクも高めることになる。

スクワットを伸ばすためにはあるいは、 上半身をやめてスクワットだけをやるという裏技も存在するのだが、 この選択肢はウェイトリフター以外ではあり得ない。

むしろどちらかというと、クイックリフトのような瞬発系や、 ランニングによって足腰を作っていく方が良いように思う。 太さは失われるだろうが、ランニングをした場合では 心肺機能も強化されるので、これは上半身のトレーニングにも良い影響を与えるはずだ。 ランニングはまた、認知機能にも良い影響を与えることが知られている。

新しいサイクル

そこで今のところ、以下のようなサイクルを検討している。

  1. 胸(重)
  2. ランニング
  3. 背中(重)
  4. ランニング
  5. 胸(軽)
  6. ランニング
  7. 全身・背中(軽)
  8. 全休

軽い日は、重い日の7-8割程度の負荷を使い回数を挙げる。 筋肥大に最適なトレーニング間隔には色々な説があるが、 筋肉は72時間ほどで回復し、そこで再度刺激を入れるのが最善だという 伝統的な超回復の理論は概ね正しいような体感がある。 そこで、中3日程度で各部位を回していくことにしたい。

また、重い日と軽い日を繰り返すことは、短期的なピリオダイゼーションとなり、 カーボサイクルダイエットと同様の理屈で、刺激を新鮮に保ち続ける可能性がある。

もしこれで胸や背中が今よりも効率よく筋肥大するのであれば、 スクワットを捨てる価値はあったことになるだろう。 Drehkraft今までありがとう。

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