LinuxCon Europeにおけるdm-writeboostへのコメント

10/21-23の日程でイギリスエジンバラにて開催されたLinuxCon Europeに出張してきた。ストレージ業界では永続メモリへの期待が強まりつつあり、ミニサミットが開かれるために、出張という形で参加してきた。その内容については割愛する。

旅程における女子大生のような日記も割愛する。こちらは、FacebookかTwitterを見てもらえば分かる。レストランに入って食事を写真でとったり、大変楽しんでいる。エジンバラは良いところであった。日照時間が少ないので長く住んでいると鬱病になりそうだが。

LinucCon Europeでは、私自身は直接、二人の有名ハッカーと会話することが出来た。一人はRedHatのリックウィーラーであり、もう一人はLWNのジョンコルベットである。リックウィーラーは、writeboostを知っていた。「君がAkiraか。writeboostのことは同僚から聞いている。とても面白いソフトウェアだと思う。Thanks for your work」という感じのコメントであった。リックからはお名刺を拝受した。ジョンコルベットは、一度LWNで取り上げたはずだが、名前を変更してしまったせいか、ピンと来なかったが、Log-structured Cachingと言ったら、はーはーという感じであった。

この前のPlumbersでも永続メモリの話があった。永続メモリをストレージに応用することで、今までは考えられなかった飛躍があり得る。writeboostについていうと、RAMバッファを永続化することによって、常に最大サイズのフラッシュが可能になり、完全なるシーケンシャルライトが実現する。寿命は当然、maximizeされる。ファイルシステムを永続メモリ対応することによって、例えばメタデータジャーナリング部分を最適化することが可能であるが、ただですらギリギリのところで動かしている(そしてバギーな)複雑なファイルシステムをこの新しい部品に対応させるのは極めて困難であるし、開発方法も難しい。一体どういうインターフェイスによって永続メモリをONにするのか、切り替えは可能なのか?たぶん不可能である。XFSやext4といった広く使われているファイルシステムが永続メモリに対応するということは、現実的にはあり得ないと思う。遊びでやってみたという人は生まれるだろうが、現実的にメインツリーで使われるとは思わない。

永続メモリに対応したwriteboostを使うと、これらのファイルシステムはジャーナリングをやめることが可能になる。データの書き込みもすべてがSSDにシーケンシャルライトされる、極めて高速となる。はっきり言って、ファイルシステムは余計なことをするな、軽量であれ、ext2で良い、という感じになる。このように、writeboostは未来のストレージにおいて基幹的な部品になり得るポテンシャルを持っている、極めて有力なソフトウェアである。提案から早い時期に、RedHatチームによる審査が行われているのは、writeboostが有力だからである。永続メモリの対応についていうと、すでに私の頭には実装が存在するし、初期化時の切り替えによって永続メモリ対応を行うことが可能となる。ライトブーストは、最初からこのピークを計算して作られている。ピークの低いソフトウェアは魅力がない。昨今、コミュニティでは性能ネタがサチりはじめた気配がある。もしそれが、性能を高めてバギーにすることへの嫌気であれば、魅力に映るソフトウェアはすなわち強烈でなければならない。writeboostは文字通り強烈である。Linuxストレージの設計バランスを変えることが出来る。「さよならファイル野郎」これがwriteboostのスローガンである。

他にも私の知らないところで、btrfsのクリスメイソンや、block野郎のジェンズアクスボー(ともにFusion-ioの技術者であろうか)からもコメントをもらえて、いずれも良好な反応であったとのことである。大変喜ばしい。もしかしたら、何かこれからの展開に響いてくるかも知れない。やはり私もカーネルサミット会場に乗り込んで直接話をするべきであった。次があるならば、今回の反省を踏まえて逆襲する。

今後、writeboostはさらに飛躍する。本格的にアップストリーム化を目指し、3.14でのマージを狙う。マージされたあとには多くの収穫がある。個人的に始めたプロジェクトに、私的な時間を含め、大変な犠牲を払ってきた。そろそろ大きな収穫が欲しい。そして一旦、数ヶ月でいいから、writeboostから離れたい。

ちなみに昨日は楽天TCに行ってきた。ここでも楽天技術研究所の人などに、writeboostを開発している!と紹介をしてきた。代表的なコアソフトウェアがあるということは良いことである。もし私がwriteboostを開発してなかったら、LinuxConに行ってもただ座ってるだけだったし、有名ハッカーと話す機会も得られなかっただろう。根城を持てただけでも十分に回収しているという見方もあるだろうか。否。全く満足出来ない。失ったものが大きすぎる。5億は必ず回収させていただく。倍返しだ!*1

*1:ちなみに私はwriteboostの価値は5億どころではないと思っている
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